スモールトークが変わる3つの視点-苦手な理由は英語と日本語の構造の違いにある-
「英語での業務は問題ない。でも、雑談になると一気に詰まる」
英語での“スモールトーク(雑談)”に苦手意識を持つ日本人ビジネスパーソンは多くいます。
「会議に直結しない話題なのに、なぜ議題に入る前に雑談が必要なのか?」
と疑問に感じながらも、「避けて通れない現実」に直面している方もいるのではないでしょうか。
この記事では、英語のスモールトークが苦手に感じる理由と、今日から使えるテクニックをお伝えします。
なぜ日本人はスモールトークが苦手なのか?
「なんとなく苦手意識がある」という方もいらっしゃると思います。まずは、苦手な理由を言語化することが、スモールトークを克服する第一歩です。
国際ビジネスの現場では、“スモールトーク”は、単なるおしゃべりではなく、“信頼構築の第一歩”として非常に重要な役割を果たします。
一方、日本のビジネス文化では、「必要なことを簡潔に伝える」「業務に直接関係しない話は控える」傾向があります。
そういった文化背景の違いもありますが、スモールトークが苦手だと感じる要因をご紹介します。
背景知識がない話題には入っていけない
たとえ英語ができても、話題の文化的背景や知識がなければ雑談には参加しにくいものです。
- アメリカ人の雑談に頻出する話題
- カレッジフットボール
- 高校時代のボランティア活動
- 社会保障制度
聞いたことがあっても、英語で自分の意見を交えながら話す経験がなければ、ついていけないのは当然です。
雑談には「終着点」がない
仕事上の会話には明確な目的やゴールがあり、そこに至る大まかな流れがあります。
- 問題を解決する
- 依頼を引き受けてもらう
- 交渉を成功させる
それに比べて、雑談は脱線したり、脱線した話が本筋になったりと、会話の流れについていくのも一苦労です。使われる語彙や表現も「なんでもあり」です。
- 脱線あり
- 終わりが不明
- 正解がなく何でもあり
英語でこの“自由すぎる会話”に乗っていくのは、文法力以上に即興力や反応力が求められます。
主語の省略文化による言語構造の違い
日本語では主語や意図を曖昧にしたままでも会話が成立しますが、英語では「主語を明確にして、自分の意見や感情を表現する」ことが基本です。
“I'm happy about it.” “That sounds good.” などの感情表現が日本語よりも頻繁に使われます。そのため、「自分の話をする」「自己開示をする」習慣が少ないと、雑談の糸口を見つけにくいです。
つまり、日本語では成立する“空気を読む会話”が、英語のスモールトークでは通用しないというギャップがあります。
本記事では、この「言語構造の違い」について掘り下げていきます。
言語構造の違いがスモールトークに与える影響
日本語と英語では、言語の構造だけでなく、会話のスタイルそのものに大きな違いがあります。
この違いが、英語でのスモールトークを「やりにくい」「何を話していいか分からない」と感じさせる原因のひとつです。
日本語は「主語を省略しても通じる」言語
日本語では、主語や目的語を省略しても、話の流れや文脈(=空気)から意味を汲み取るのが一般的です。
たとえば、「暑いね」(=今日は暑いですね)
このように、誰が何をどう思っているかを明示しなくても会話が成立します。
聞き手が察することができる、状況や雰囲気にあわせて省略しても通じるため、主語を使って「自分の気持ちをはっきり言うこと」自体が消極的な文化背景もあります。
主語を使わなくても何の不自由も感じないし、むしろ使わないことによって「雰囲気」に合わせた細やかなコミュニケーションを実現しているのだ。
自分だけでなく多くの相手がいるという「世間」の中で、互いに意思疎通を図る言語として発達してきた日本語の下で生まれてきたのが、他人より先にしゃべることをためらう文化だ。
出典:日本語と日本人(第1回―総論)―主語を使わない日本語―
英語は「主語+動詞が基本」=自己主張前提の言語
英語は基本的に主語(I, You, We など)を明示し、文の最初に「誰が何をするか」を置く構造です。
例:
“I feel a bit tired today.”
“You look great in that color!”
“We had such a great time at the event.”
これらはすべて、「主語 + 動詞」で自分の視点や感情、考えを表現する構造です。
つまり、英語は自己開示と感情表現が標準装備されている言語なのです。
雑談で「何を言えばいいかわからない」の原因
言語構造の違いにより、英語のスモールトークでは…
“What did you do over the weekend?”(週末何した?)
“How do you feel about the new project?”(あのプロジェクトどう思う?)
などの質問に対して、
→ 日本語の感覚だと「うーん、別に特に…」話すほどのことがない。
→ 英語では、“I just stayed home and relaxed. It was actually nice.” のように「自分の状態・感情」を織り交ぜて話すのが普通。
このように、自己開示に慣れていないと、“英語では話すことがない”と感じてしまうのです。
英語のスモールトークで「空気を読む」は通用しにくい
英語圏の雑談では、言葉にして共有することが信頼や親しみのベースになります。「黙って察する」「沈黙で気持ちを汲む」という文化は基本的にありません。
つまり、話さない=興味がない、距離を感じる、と受け取られる可能性もあるため、そうならないように雑談で使えるテクニックをご紹介します。
言語ではなく「発想の切り替え」
日本語の感覚から離れ、「英語では“主語と感情”をセットで話すのが自然」と理解すれば、かなりスムーズに対応できるようになります。
“How was your weekend?” と聞かれたとき、”Not bad.” “It was nice.”で終わっていませんか?
それにプラスして、感情表現を明確に伝えると会話が続くきっかけになります。
例:
・「まぁまぁ」も理由を加えると話が広がる。
Not bad. → Not bad. I went to see a movie with my friends.
・ 特に話すことがなくても、感情を添えると雑談につながる。
I just had a quiet weekend. → I just had a quiet weekend. Sometimes that’s the best.
スモールトークの質を高める“句動詞”の活用
フォーマルな表現は雑談では「堅く、距離がある」印象を与えることがあります。句動詞(phrasal verbs)を使うことで、英語に親しみやすさを出せます。
句動詞とは、動詞に副詞や前置詞が加わった表現で、親しみやすく、柔らかい印象を与える言い回しです。
“consider” と “think about” が与える印象の違いで例えると
“consider”は、会議やプレゼンで使うには適切ですが…
“We should consider all the possible risks before launching.”
カジュアルな雑談で使用すると…
A:Are you joining us for coffee later?
B:I’m considering it.(少しよそよそしく聞こえる)
C:I’m thinking about it.(柔らかい/自然に聞こえる)
どちらも正解ですが、雑談や軽い会話では、“consider”は少し距離感があり、堅苦しく聞こえる場合があります。
言いたいことを“どう伝えるか”=言葉の温度感が重要なのです。
時と場合によって、「意味」より「印象」で表現を選ぶことも重要なテクニックになります。
英語の雑談力を格段にアップさせるのに句動詞が役立ちます。
句動詞について、もっと詳しく知りたい方は「句動詞でビジネス英語が変わる-ネイティブらしい自然な伝え方になる理由-」をご覧ください。
スモールトークは信頼構築の“助走”
英語での会話は「ウォーミングアップ」から始まり、アイスブレイク的な一言から始まります。
これは「雑談しないと本題に入れない」というより、「雑談が信頼の扉を開く」文化なのです。
日本語での「察する・省略する」会話と、英語の「伝える・共有する」会話は、根本的なスタイルが異なります。そのため、苦手意識がある方は多いと思います。
英語でのスモールトークに慣れる場が少ない
また、英語でのスモールトークに慣れる場が少ないのも、日本人ビジネスパーソンが苦手と感じる要因です。
海外生活の経験がない限り、英語での雑談シーンをリアルに経験する機会が少ないと思います。
教材も「ビジネス英会話」や「TOEIC対策」が中心で、雑談のパターンは学びにくく、「英語が苦手」というよりも「知らない」「経験が少ない」のが、避けたくなる要因です。
とくに「会話に正解はない」「感情表現をプラスする」「意味より温度感を大切にする」といった3つの視点を意識すれば、英語力よりも“会話のスタンス”で大きく変わる領域です。
このギャップを意識するだけでも、スモールトークはグッと楽になります。
そんな苦手意識をどうにかしたい方向けに開発されたのが、ビジネスシーンの雑談に特化した「パタプラ句動詞&スモールトーク」です。
この教材の特長である
- ①ビジネスシーンで役立つ280個の句動詞を厳選
- ②実際の会話を想像できるダイアローグを用意
- ③自分の言葉として口に出すための学習メソッド
を通して、
スモールトークを「苦手」から信頼を構築する「見せ場」に変えます。
参考文献
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監修:松尾 光治
元大手英会話スクールの教務主任、教材開発。在米35年、現在もニューヨーク在住。早稲田大学第一文学部中退、英検1級、TOEIC985点。英会話の講師とニューヨークでの日系商社での勤務経験から、日本人ビジネスパーソンを対象にした実用的な英語教材を開発。
ビジネスシーンの
スモールトークを攻略する