句動詞で
ビジネス英語が変わる- ネイティブらしい自然な伝え方になる理由 -
“contact” では伝わらない温度感が、“reach out” なら伝わる。句動詞を使うことで「通じる」から「響く」英語に変わります。柔らかい印象を与える表現方法を解説します。
ビジネスシーンでこんな経験はありませんか?
「堅い表現や回りくどい話し方になってしまう」「瞬時に相手が言っていることを理解できない」その原因、もしかすると“句動詞”かもしれません。
「英語の語彙もそこそこある」「会議の資料も読める」――
単語も文法もできるのに、なぜかネイティブと話すと噛み合わないことがある。
そんな経験、ありませんか?
実はそのギャップの正体のひとつが、句動詞(phrasal verbs)です。
句動詞(phrasal verbs)とは
基本的な動詞(get, take, put など)に、副詞や前置詞(up, out, off など)が組み合わさることで、単語単体とは異なる「新しい意味」を生み出す表現です。
例えば
- put off( put 置く + off 離れて =「延期する」)
- carry out( carry 運ぶ + out 外へ =「実行する」)
- run into( run 走る + into 〜の中へ =「偶然出会う」)
といった表現です。
見た目はカンタンな単語の組み合わせでも、意味は単語の足し算ではなく、セットでひとつの動作や状況を表します。
句動詞とイディオムの違い
句動詞もネイティブが使う口語表現の一部で、イディオムと混同されやすいです。
イディオムは使われている単語からは推測しにくい慣用的な表現に比べ、句動詞の多くはなんとなく意味を想像しやすい表現です。
なぜ句動詞がビジネスパーソンに重要なのか?
句動詞の特徴は「ネイティブが最初に覚える、カジュアルで自然な言い回し」であること。
英語ネイティブは幼少期、"get up" "wake up" "turn on the light" のような句動詞から英語を覚えはじめます。彼らにとって、句動詞は日常で使うもので感情がこもる言葉であり、人間味のある言葉なのです。
そのため、ビジネスシーンでも句動詞を適切に使うことで、親しみやすさ、温かみ、柔らかさといった印象を与えます。
逆に言えば、句動詞を使わず堅い動詞ばかり使っていると、「この人、なんか距離があるな」「マジメすぎて話しにくい」と思われてしまうことも。
たとえば、こんな言い回しを比べてみてください。
We need to reach out to potential clients.
We need to contact potential clients.
どちらも意味は同じですが、手を伸ばして相手に触れようとするイメージを思い起こさせる「reach out 」のほうが感情がこもった協力的で前向きなニュアンスを持ちます。
句動詞を使った会話を日本語で例えると
TOEICで学ぶ動詞の大半は「堅い言葉」です。
句動詞と堅い言葉の創り出す雰囲気の違いは、日本語の和語言葉と漢語の違いに似ています。(和語:始める、漢語:開始する)
和語を使った会話
A:「新しい取り組み、どう思います?うまくいきそうですか?」
B:「やり方は良いと思いますが、もう少し話し合った方がいいんじゃないでしょうか?」
漢語の多い会話
A:「新規施策についてどうお考えですか?成功の見込みはありますか?」
B:「方針自体は適切と思われますが、さらなる協議が必要ではないでしょうか。」
どちらも伝わりますが、同僚との会話なら和語を使った方が柔らかい印象を感じますよね。
英語も同じです。
場面によって表現を使い分けることで、コミュニケーションが円滑になります。
その手段として句動詞が役立ちます。
ネイティブの語彙構造と語彙学習のギャップ

そもそも、なぜ私たち日本人はネイティブとの会話にギャップを感じたり、堅い話し方になってしまうのでしょうか。
要因のひとつである「語彙習得のステップの違い」についてカンタンに解説します。
語彙学習のギャップを理解しやすくするため、まずは英語の成り立ちからお話します。
英語の語彙は、次の3つのレベルに分けられます。歴史の流れで大きく3つの言語が混ざってできたのが英語です。
レベル1(ゲルマン語系)
see, go, take, get などの日常的・家庭的で平易な語彙。句動詞の動詞部分はこの層。
レベル2(フランス語系)
view, contact, include などのやや形式的で抽象的な語彙。
レベル3(ラテン語・ギリシャ語系)
observe, exclude, elaborate などの高度・専門的な語彙。
たとえば「見る」という動詞だと、see → view → observe の順に堅い響きになります。
「このレベル順に難しくなる」と感じる英語学習者も多いと思います。
日本人英語とネイティブ英語のすれ違いの要因
日本人はTOEICなどでこのレベル2〜3の語彙を中心に学ぶ傾向があります。
一方、ネイティブは、まずレベル1の語彙で句動詞を身につけ、そこから上に積み上げていきます。
この逆ピラミッド構造が、日本人英語とネイティブ英語のすれ違いを生み出すのです。
たとえば、日本人が “exclude” を知っていても “rule out” を知らないと、ネイティブにとっては「え、それ知らないの?」という温度差が生じます。
句動詞が活躍するビジネスシーン
Oxford Phrasal Verbs Dictionaryには6,000以上、Cambridge大学出版の『English Phrasal Verbs in Use』にも3,000近い句動詞が紹介されています。
B1〜B2レベルの学習者なら300〜400語、C1〜C2レベルでは500〜600語の理解が求められるとも言われています。それでも、ほとんどの句動詞は中学英語レベルの単語で構成されているのです。
句動詞は、以下のような多様なシーンで活躍します。
- 社内メールで気さくな印象を与えるとき
- 同僚との会話をスムーズにしたいとき
- 上司と雑談するとき(※相手のタイプによる)
- 友人とのカジュアルな会話
- 感情をこめた本音のやりとり
- ブログやSNS投稿、会話、動画などすべての非公式英語
一方で、次のような場面では句動詞を避けるのが賢明です。
- フォーマルな会議
- 法務文書や契約書などの公式書類
- 礼儀や権威を重んじる表現が求められる場面
句動詞は「インフォーマルな表現」ではなく、「表現の幅を広げる手段」です。
句動詞を使う場合と使わない場合で、日本語の「敬語」と「タメ口」ほどのギャップはありません。
日本人英語学習者に足りない“ピース”
日本人が状況に応じて、和語と漢語の使い分けを無意識に行っているのと同じく、英語ネイティブも句動詞と一般動詞を使い分けたり、バランスよく混ぜたりして会話しています。
句動詞を学ぶことで英語の理解力が広がるのみでなく、相手が意図する会話のフォーマル度を知れたり、自分から適度な親しみやすさや、リラックスした雰囲気を作ったりするきっかけができるようになります。
句動詞の習得は、英語を「通じる言葉」から「響く言葉」へと変えてくれる手段です。
では、どうやって句動詞を効率よく身につけられるのでしょうか?
これまでの英語学習では、句動詞は「熟語」や「イディオム」と一括りにされてきました。
イディオムとは違い、句動詞は構成する単語から、ある程度は意味が推測できるケースも多く、覚え方や使い方のコツも存在します。
それにもかかわらず、句動詞だけに特化した教材は日本にはほとんどありませんでした。
そこで、新しく開発されたのが「パタプラ句動詞&スモールトーク」です。
この教材は、ビジネスにも日常会話にも使える句動詞を厳選し、
- ①ビジネスシーンで役立つ280個の句動詞を厳選
- ②ネイティブの使い方に基づいたレッスン内容
- ③自分の言葉として口に出すための学習メソッド
を通して、
句動詞を「知り」、さらに「使える」状態に引き上げることを目的としています。
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監修:松尾 光治
元大手英会話スクールの教務主任、教材開発。在米35年、現在もニューヨーク在住。早稲田大学第一文学部中退、英検1級、TOEIC985点。英会話の講師とニューヨークでの日系商社での勤務経験から、日本人ビジネスパーソンを対象にした実用的な英語教材を開発。
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